対象読者
下記のいずれかに一つでも当てはまる方がいましたらお読みいただけると幸いです!
- 天然物由来成分がどのように作られるか興味のある方
- 有機化学と天然物化学、生化学を繋げて考えられるようになりたい人
- 有機化学をある程度(求核、求電子置換反応)まで大学で触れている人
- 生薬学、漢方薬学を大学で勉強している人
- 国家試験、CBT対策中の薬学部4年、6年生
初めに
まず初めに、薬学部で学ぶ生薬学・漢方薬学とその他の関連科目について以下にまとめてみます。

最初にこちらを提示した理由として、生薬・漢方は他の科目との繋がりが薄くどうしても独立した知識になってしまいがちな領域であると考えているためです。
- 生薬学
→起源植物 薬用部位 薬効 匂い 成分 用途 歴史 - 漢方薬学
→証 漢方の適応 配合生薬の役割 副作用 - 天然物化学
→生薬由来成分の構造、生合成経路 - 医薬品化学
→生体分子と医薬品の相互作用
特に生薬は明確な作用機序が判明していないことが多く、薬理のように生物と繋げて理解する事が難しいです。加えて「植物」に着目した学問であるため、それまで「人間」の身体の事をメインで学習してきた薬学生にとってはなかなかとっつきにくいと感じる事もあります。それに比較して天然物化学、医薬品化学の分野では生化学や有機化学的な考え方のアプローチがしやすいです。
そこで今回の記事では、筆者が大学で実際に行っていた「天然物化学」に対して有機化学的なアプローチを行いそこから有効成分や生薬学、漢方に繋げていくという勉強法について紹介し、そこで得た知見や考え方をご共有できればと考えております。
記事のボリューム的にかなりのものになりそうですが最後までお読みいただけると幸いです。
生薬で出てくる「○○経路」は生化学の発展形
1次代謝経路と2次代謝経路
生化学で学ぶ「ヒト」の代謝経路と、天然物化学で学ぶ「動植物」の代謝経路は非常に良く似ています。特に解糖系、脂肪酸合成経路、コレステロール合成経路の3つの経路につきましてはベースとなる反応機構はほとんど同一と言えるでしょう。
解糖系や脂肪酸合成経路はエネルギー産生や生理活性物質の合成に関与しており原則としてヒト、植物問わず生命活動に必須となる経路です。これを1次代謝経路と呼びます。対してフラボノイドやアントラキノンといった生薬由来成分は、2次代謝経路によって合成された2次代謝産物として分類されております。

生化学で学ぶ代謝経路(1次代謝経路)
まずは、人間の生体内で起きている反応の全体像を示します。
生体内の反応ですので、本来ならば進行しにくい反応も酵素によって進行したりします。生体内反応についてはこちらの記事もご参照下さい!
ここでは主に薬学部の生化学で学ぶ事になる、解糖系、脂肪酸合成経路、コレステロール合成経路の3つの生合成経路について取り上げます。
解糖系→シキミ酸経路
解糖系は糖質(グルコース)の代謝経路です。嫌気的条件下でのエネルギー産生を担っている事に加えて、他の多くの代謝経路に必要となる基質をグルコースから生成しています。
解糖系の中間体にはジヒドロキシアセトンリン酸、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸などがあります。1-3ビスホスホグリセリン酸は細胞膜などの合成に、ホスホエノールピルビン酸はシキミ酸経路の原料、ピルビン酸はミトコンドリアでの好気的エネルギー産生の前駆体となるなどの役割をそれぞれ持っています。
解糖系
図 解糖系その1 グルコース→フルクトース1-6ビスリン酸

- ヘキソキナーゼによるATPに対する求核置換反応
- グルコース→グルコース6リン酸
- グルコース6リン酸イソメラーゼによるケト-エノール互変異
- グルコース6-リン酸→フルクトース6リン酸
- ホスホフルクトキナーゼによるATPに対する求核置換
- フルクトース6-リン酸→フルクトース1-6ビスリン酸
図 解糖系 その2 逆アルドール反応 (薬剤師国家試験出題済み)

- アルドラーゼリシン残基によるC2ケトンに対する求核付加
- フルクトース1-6ビスリン酸のイミノ化(イミニウムイオン)
- Asp残基が塩基として働きC3-C4間結合が切断
- グリセルアルデヒド3-リン酸が切り落とされる
- 残ったC3とAsp、Lys残基間で加水分解反応が進行
- ジヒドロキシアセトンリン酸の生成
- トリオースリン酸イソメラーゼによるケトエノール互変異
- ジヒドロキシアセトンリン酸→グリセルアルデヒド3リン酸
図 解糖系その3 エネルギー生成

- グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼによる酸化(ヒドリドの引き抜き)及び無機リン酸の付加
- グリセルアルデヒド3リン酸+NAD + 無機リン → 1-3ビスホスホグリセリン酸 + NADH
- ホスホグリセリン酸キナーゼによるADPとの反応
- 1-3ビスホスホグリセリン酸 + ADP → 3ホスホグリセリン酸 + ATP
図 解糖系その4 その他の経路の原料

以上が解糖系の反応になります。繰り返しになりますが、1-3ビスホスホグリセリン酸は細胞膜などの合成に、ホスホエノールピルビン酸はシキミ酸経路の原料、ピルビン酸はミトコンドリアでの好気的エネルギー産生の前駆体となるなどの役割をそれぞれ持っています。
シキミ酸経路への派生
図5 シキミ酸経路その1 開始反応

- ペントースリン経路由来のエリトロース2リン酸と解糖系由来のホスホエノールピルビン酸が反応
- リン酸基の脱離に伴うアルドール反応
- 7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸の生成
→分子内求核付加反応によりピラノース構造に
図6 シキミ酸経路その2 環状構造の形成

- ピラノース構造→シクロヘキサン構造へ
- 酸化、脱リン酸、還元反応を受けた後、鎖状構造に戻る
- 分子内アルドール反応によりシクロヘキサン構造を形成
- 水酸基に新たなホスホエノールピルビンが結合
図7 シキミ酸経路その3 C6-C3構造の形成

- 脱水反応を伴う共役構造の形成
- 共役的な脱離
- ピルビン酸残基の転移
- 脱炭酸による芳香環形成
図 フェニルアラニンとトリプトファン合成(コリスミ酸以降での分岐)

コリスミ酸が転移反応を起こした後、そのまま脱炭酸反応を起こしC6-C3構造を形成するルートと、アミノ基が付加してから脱ピルビン酸反応を起こしアントラニル酸に変換される経路に分岐します。前者はフェニルアラニンやシンナムアルデヒドの前駆体となり、後者はトリプトファン合成の前駆体となります。以下に分岐の反応機構を示します。
シキミ酸経路由来の化合物を含む生薬

シキミ酸経路由来の化合物であるシンナムアルデヒドを含む生薬としてケイヒがあります。ケイヒは冷えを取り除き血の巡りをよくする作用があると言われており、桂枝湯類と呼ばれる漢方処方に含まれる生薬です。ベースの桂枝湯はかぜ薬として用いられますが、その他の生薬を組み合わせる事で様々な疾患に対して効果を示します。また、最新の研究では、シンナムアルデヒドにインフルエンザウイルスの増殖抑制効果があるといった報告があります。
以下にシンナムアルデヒドの生合成経路を記します。前駆体はコリスミ酸から生成したフェニルピルビン酸であり、そこからフェニルアラニンを介してシンナムアルデヒドに変換されていきます。
図 シンナムアルデヒドの生合成経路

- アミノトランスフェラーゼ(補因子としてビタミンB6)
- ケトンのイミノ化(求核付加)
- C-N二重結合の転移
- 加水分解
→フェニルアラニンが生じる
- PAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)によるアミノ基のE1cb脱離
- ケイヒ酸が生成
- カルボキシ基の還元
- ケイヒ酸→シンナムアルデヒド
脂肪酸合成経路≠酢酸マロン酸経路
酢酸マロン酸経路は生化学で学習する脂肪酸合成経路に非常に良く似ています。
アセチルCoAのカルボキシ化及び脱炭酸縮合
図 アセチルCoAのカルボキシ化→脱炭酸縮合

- ビオチンによるアセチルCoAのカルボキシ化
- 炭酸イオンのリン酸化
- ビオチン残基のカルボキシ化(求核置換)
- アセチルCoAのカルボキシ化(クライゼン縮合)
→マロニルCoAの生成
- マロニルCoAの脱炭酸縮合
- マロニルCoAが脱炭酸した後、βケトラーゼのアセチル化残基にクライゼン縮合
→アセトアセチルCoAへ
- マロニルCoAが脱炭酸した後、βケトラーゼのアセチル化残基にクライゼン縮合
脂肪酸合成とポリケチド合成の分岐
図 脂肪酸合成とポリケチド合成の分岐

前述した反応を繰り返す事で炭素鎖が延長されていきます。マロニルCoA(C3)が脱炭酸的(-C1)に縮合を繰り返していくためC2単位ずつ炭素鎖が伸張されていきます。
図 直鎖合成


脂肪酸合成では炭素鎖が伸張するたびに、①βケト基の還元→②脱水→③α-βアルケンの還元の順に反応を受けて直鎖上の炭素鎖になります。これにより飽和脂肪酸が合成されていきます。
図 ポリケチド合成


対して、緑で囲った酢酸マロン酸経路では炭素鎖の伸張が連続で起きます。結果、β位にケトンが連続して存在するポリケチドになります。そしてこのポリケチドが分子内反応で環化することにより様々な化合物が合成されていきます。

酢酸マロン酸経路由来の化合物を含む生薬

酢酸マロン酸経路由来の化合物であるセンノシドAを含む生薬としてダイオウがあります。ダイオウは消炎作用により胃腸の炎症を鎮めるとともに、便秘に対する瀉下作用があると言われており、大黄剤、承気剤と呼ばれる漢方処方に含まれる生薬です。また、センノシドは単成分抽出された医薬品(便秘症治療薬)としても用いられています。

図 センノシドの生合成経路

- C16ポリケチドの分子内アルドール縮合
- C2→16、C4→13、C6→C11で分子内アルドール縮合
- 付加を受けた側(C16、C13、C11)の水酸基が共役脱離
→芳香環を形成して安定化
- センノシド前駆体(アントロン体)が生成
→二分子重合、糖鎖付加を受けてアントロン体を形成
コレステロール合成経路=メバロン酸経路(イソプレノイド経路)
メバロン酸経路(イソプレノイド経路)は、コレステロール合成経路の反応と原則同じです。言い方を変えるとステロイド骨格もイソプレノイドの一種であるため、コレステロール合成経路はメバロン酸経路の一種と言えるでしょう。
アセチルCoAからメバロン酸の合成

- アセチルCoAの二分子重合
- 酵素(アセチルCoA-Cアセチルトランスフェラーゼ)のシステイン残基を触媒としたクライゼン縮合
→アセトアセチルCoAの生成
- 酵素(アセチルCoA-Cアセチルトランスフェラーゼ)のシステイン残基を触媒としたクライゼン縮合
- 新しいアセチルCoAがアセトアセチルCoAのC3ケトンに対して求核付加
- 酵素(HMG-CoA合成酵素)を触媒としたアルドール縮合
→HMG-CoAの生成
- 酵素(HMG-CoA合成酵素)を触媒としたアルドール縮合
- HMG-CoAチオエステル部の還元
- 酵素(HMG-CoA還元酵素)によりチオエステルが還元されアルコールになる。この時ヒドリド供与体としてNADPHが用いられている。
→メバロン酸の生成。
- 酵素(HMG-CoA還元酵素)によりチオエステルが還元されアルコールになる。この時ヒドリド供与体としてNADPHが用いられている。
余談 スタチン系薬はメバロン酸経路の初期段階を阻害する
少し余談になりますが、高コレステロール血症治療薬であるスタチン系薬はHMG-CoAと類似した部位を構造中に持っております。これによりHMG-CoAの活性を阻害すると考えられています。
図 スタチン系薬の作用機序とファーマコフォア

HMG-CoA還元酵素を阻害すると上記で説明した反応が進行しなくなるため、メバロン酸経路が進まなくなります。結果、肝臓でのコレステロールの合成が阻害され、それを補うために体は血中から肝臓に多くのコレステロールを取り込みます。これがスタチン系薬により血清のコレステロール値が下がって行く理由です。

COMPLEX OF THE CATALYTIC PORTION OF HUMAN HMG-COA REDUCTASE WITH SIMVASTATIN 1HW9
https://www.rcsb.org/structure/1HW9
上図がHMG-Coa還元酵素とプラバスタチンの結合様式になります。プラバスタチンは構造中にHMG-CoA類似構造を有しており、ここが酵素中のアミノ酸(Arg,Asp,Lys)と相互作用をすることで酵素と基質の反応を阻害します。対してシンバスタチンは環状部位が加水分解され、開環することでHMG-CoA類似構造が形成されます。このことから、シンバスタチンは代謝を受けてから薬理活性を発揮するプロドラッグと言えるでしょう。以前の記事でも触れましたが、安全(Safe)な不活性体(inactive)という意味合いがシンバスタチン(sinvastatin)の語源になっています。

メバロン酸のリン酸化
話が少し脱線してしまいましたが、本題に戻ります。
図 メバロン酸のリン酸化

- ATPによるメバロン酸のリン酸化
- メバロン酸のC5ヒドロキシ基がATPのリン酸基に対して求核置換。
→2回繰り返す事でジホスホメバロン酸が生成する
- メバロン酸のC5ヒドロキシ基がATPのリン酸基に対して求核置換。
イソプレノイド構造の形成
図 ジホスホメバロン酸の脱水酸化、脱炭酸

- 水酸化→脱炭酸反応
- ATPとC3の水酸基がリン酸化(Asp残基、Ser残基)により反応性向上
- リン酸化水酸基の脱離によりカルボカチオンに
- カルボキシ基が脱炭酸しイソプレノイド(イソペンテル2リン酸)が生成する。
※詳しい構造は下記の図を参照
図 イソプレノイドの形成と異性化

- イソペンテル2リン酸→ジメチルアリル2リン酸への異性化反応
- 異性化酵素のCys残基、Glu残基との酸塩基反応を介して二重結合の位置が移動する
※C1-C2不飽和結合→C2-C3不飽和結合に
- 異性化酵素のCys残基、Glu残基との酸塩基反応を介して二重結合の位置が移動する
- イソペンテル2リン酸のカルボカチオン化
- 共役カルボカチオンであるため、安定。リン酸基の脱離が進行しやすい。
- ジメチルアリル2リン酸による求核攻撃
- ②の反応と合わせてSn1機構で反応。C10のイソプレノイド(ゲラニル2リン酸)が生成する
炭素数別イソプレノイド

イソプレノイドは、重合数によって種類が決まっています。また、別名でテルペノイドとも呼ばれ別名についても炭素数毎に名前が決まっています。化学では数少ない単純暗記です。ここは覚えてしまいましょう。以下に名称の名前とポイントを示します。

モノテルペン類とトリテルペン類の生合成経路の例をいくつか記します。今回取り上げないセスキテルペン、ジテルペン、セスタテルペンにつきましてはまた別の記事で取り扱っていきます。
モノテルペン類

- ゲラニル2リン酸の環化
- C6→C1への分子内求核置換反応で環化(Sn1機構)
- C6→C1への分子内求核置換反応で環化(Sn1機構)

- 二重結合化、水酸化などの反応を受けて様々な化合物に変換されていく
- リモネン(ミカン科果皮)、チモール(シソ科植物の精油)、メントール(ハッカの主成分) etc・・・・

- 分子内求核置換、転移を繰り返す事で架橋構造を形成していく例もある
- ピネン(マツ科植物油)、カンフル(樟脳の主成分) etc・・・・
トリテルペン類
- ファルネシル2リン酸(C15)の二分子重合
- C1どうしで重合。環状の中間体を介して反応が進行しスクワレン(C30)になる
※tail-to-tail結合
- C1どうしで重合。環状の中間体を介して反応が進行しスクワレン(C30)になる

- 末端ファルネシル基のエポキシ化
- 酵素 スクワレンエポキシダーゼ
- 分子内求核反応が繰り替えされる
- ステロイド骨格の形成。

ステロイドはトリテルペンから炭素が脱離したものになります。少し細かいですが、模擬試験ではここの違いなどが問われたこともあります。
複合反応経路
最後に、複合反応経路についてです。天然物由来成分によっては、生合成に関わる経路が複数ある事があります。このことを複合合成経路と呼びます。部品ごとに各経路によって作られて最終的に一つの化合物に組み立てられるものや、複数の経路の反応を連続的に受けて組み立てられていくものなどいくつかのパターンがあります。今回は、具体例としてぺオニフロリン(生薬: シャクヤク)とバイカレン(生薬: オウゴン)についてご紹介いたします。
ぺオニフロリン(シキミ酸経路+メバロン酸経路の複合経路)

ぺオニフロリンは、シキミ酸経路とメバロン酸経路の複合経路で合成されると考えられています。
遺伝子発現と活性成分量の間の相関分析は,メバロン酸経路のヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼとホスホメバロン酸キナーゼおよびシキミ酸生合成の3-デヒドロキナ酸デヒドロゲナーゼ/シキミ酸デヒドロゲナーゼが,ペオニフロリンおよびベンゾイルペオニフロリンの蓄積と密接に関連することを支持した
※参考文献
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201302237626734604
J-GLOBAL ID:201302237626734604 整理番号:13A1856112

ぺオニフロリンはシキミ酸経路由来の芳香環、メバロン酸経路由来のモノテルペンが結合する事で合成されています。より詳細な合成の反応機構につきましてはこちらでも紹介されております。
https://kobegakuin-yakugaku.jp/app/wp-content/themes/kobegakuin-yakugaku/assets/img/faculty/yakusouen/no04.pdf神戸大学薬学部付属薬用植物園 薬草園だより
https://kobegakuin-yakugaku.jp/app/wp-content/themes/kobegakuin-yakugaku/assets/img/faculty/yakusouen/no04.pdf
バイカレン(シキミ酸経路+メバロン酸経路の複合経路)※国試出題済み


漢方と有機化学の架け橋が天然物化学
今回の記事では、生合成経路について、生化学との関連性及び有機化学的な反応機構を中心にご紹介させて頂きました。そして一部の合成経路に関与する酵素と医薬品の結合様式など医薬品化学的な内容にも触れております。生合成経路のラストには具体的な生薬成分をピックアップしその用途などを取り上げました。
一見すると他の科目と繋がりが薄く感じる生薬ですが、掘り下げて考えていくと薬学部の主要基礎科目(物理、化学、生物)との繋がりが非常に深いことがお分かりいただけるかと思います。今回の記事では触れませんでしたが、生薬の確認試験などは物理で学ぶ機器分析や定性反応にも繋がります。また、薬理学、薬物治療学でも漢方薬は登場するので医療系科目にも考え方は役に立ちます。
生薬、天然物化学に限らず薬学部での勉強はこのように複数の科目を統合して考える癖を付けていくことが非常に重要であると筆者は考えています。この「考え方」が今後学習していく読者の方々の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
最後に: 生合成経路の勉強法
本記事では、生合成経路について本質を理解して頂きたく基礎理論的な内容を中心に取り扱いました。天然物化学、医薬品化学分野を本質的に理解していくには細かく反応を理解する事も重要ですがそれに加えて多くの演習問題に触れていき知識を引き出せるようにすることも非常に重要になります。最後に問題を演習していく上でのポイントをいくつかご紹介し本記事を締めさせて頂きます。最後までお読みいただき大変ありがとうございました。
- 生化学、有機化学→天然物化学へ
- 生合成の反応経路(ヒトと植物との違い、各反応の反応機構)をマスターする
→生化学(解糖系、脂肪酸、コレステロール)と有機化合(Sn反応 E反応 アルドール反応、クライゼン反応など)を組み合わせて考える!
※ここが欠けている場合はまず各科目をしっかり取り組みましょう! - 材料を抑える
(例 アセチルCoA、マロニルCoA、アミノ酸 etc・・・) - 合成単位を抑える
(例 フェニルプロパノイド、ポリケチド、イソプレノイド etc・・・)
- 生合成の反応経路(ヒトと植物との違い、各反応の反応機構)をマスターする
- 天然物化学→生薬へ
- 材料、経路、生合成単位、反応機構などの知識を組み合わせ、各々の生薬に含まれる成分について合成経路を考察する
※成分○○の合成には××経路と△△経路が関与している など。
- 材料、経路、生合成単位、反応機構などの知識を組み合わせ、各々の生薬に含まれる成分について合成経路を考察する
- 天然物化学→医薬品化学へ
- 医薬品として用いられている成分は構造と、ターゲット分子の相互作用の関係を理解する(医薬品化学)
※薬理作用、ファーマコフォア、体内動態へ影響を及ぼす構造的特徴など
- 医薬品として用いられている成分は構造と、ターゲット分子の相互作用の関係を理解する(医薬品化学)
主な引用元
・公益社団法人東京生薬協会 webサイト
https://www.tokyo-shoyaku.com/index.php
→生薬画像の写真を引用
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