1-2年で学習する基礎科目の重要性について
先に結論から言うと、低学年時に学習する座学の内容の8割ほどは医療系科目の勉強や実務実習での学びに大きく役に立ちます。ここの基礎が出来ているか否かでCBTの勉強、実務実習期間中の学習効率、そして国家試験勉強等に大きく影響して来ます。

本サイトでは「実務と座学の繋がりをお伝えする」為の手段として
薬学部面白ネタ 実務実習での経験談 国試出題問題から逆算した関連分野の整理 などを発信して行こうかと考えています。
薬学部に入学すると???
座学中心で物理・化学・生物・・・
薬学部に入学するとまずは「物理・化学・生物」の高校での内容の復習から入る大学が多いかと思います。そして、一年の後期頃になるとより深い内容の物化生を学んで行く事になります。
この段階ではまだ薬の名前なども出てこずひたすら臓器の名前(生物)、化学反応の電子の動き(化学)、熱力学や放射線の数式(物理)等を叩き込まれます。
実際これらを大学で座学として勉強している期間は、なかなか薬剤師業務との繋がりが見えにくいような内容が多いかと思います。ですが定期試験や薬学共用試験があるのでそのために勉強に追われてしまっている薬学生が殆どなのではないでしょうか?
基礎から順に学んでいく都合上、座学をしている間は関連性がなかなか見えにくい状態になるのは致し方無い事なのかもしれません。

物化生の基礎があると実習期間中の学習効率が大きく変わって来ます!
先に結論から言うと、「物理・化学・生物」の8割ほどは医療系科目の勉強や実務実習での学びに大きく役に立ちます。
ここで「役に立つ」という言葉を敢えて選んだのは、「必須」のようにやらなければならないという事を意味している訳ではないからです。
最悪すっからかんの状態でも現場で使う薬は覚えられます。指導薬剤師の先生も大体は優しい方が多いので怒られたりする事は無いでしょう。
しかし、基礎を「しっかり理解」しているか否かでは11週の実習中の学習効率に大きな差が出てくると筆者は考えています。同じ時間実習をするならより多くの事を身に着けられた方が楽しいですよね?

勿論実習を有意義に出来るかどうか?は勉強がすべてではなく礼儀や人間性などそれ以外の項目も絡んで来るでしょう。だけど「それまでどれくらい薬学を楽しんで来たか?」は有意義な実習を行う為の重要な要素の内一つだと思います。
物理の知識が実習中に役に立った具体的事例を紹介!
物理ってなんで必要なの?
物化生の中でも物理ってなかなか関連性が見えにくいですよね。熱力学だったり、反応速度論の計算だったり、粒子径の測定法だったり・・
物理は基本的に「考え方」が役に立ってきます。
一包化調剤をしていた時に

○○君(さん)
この薬包装から開封して一包化しておいて!
と言われたとしましょう。

一包化って包装から開封するよな。
どれくらい持つんだろ~。そもそも一包化して良い薬とダメな薬って何が違うの????
→分解速度に関するデータ見ればわかるんじゃ????
結果調べてみたところ、一包化OKの薬剤は分解速度が遅く3年以上放置しても力価が低下しないということが分かり、逆に一包化できない、遮光保存しなければならない薬剤などは分解速度が速く数日~数時間で力価が大きく低下しているなどが分かりました。
これは、服薬指導を行う際に必要な薬の保管方法などの知識にも繋がっていきます。
さらに掘り下げて考えてみると、分解の反応機構は?(有機化学)だったり分解前と分解後の化合物の化学ポテンシャルって?(熱力学)だったりいくらでも考える事が出来ました。
これが実習での学びの最大化だと筆者は考えています。
勿論薬剤師業務をする以上その他にも考えなければいけない事は沢山あるかと思います。しかしながら、このように基礎を常に考える事は視野を増やす。日常業務を最大限の学びにするという考えをすれば非常に有意義なものになると筆者は考えています。
物理の分野別の実務に役立ち例を一部紹介
関連性まとめ(一部抜粋)
分野 | 実習中役に立った実例 |
---|---|
化学結合 ※イオン結合 ファンデルワールス力 共有結合など | 1.薬の作用発現時間、相互作用など添付文書に書かれている事の裏付けが理解出来た。 2.不可逆的に作用する医薬品とそうでない医薬品の作用発現の特性についてイメージし指導薬剤師に説明出来たところ「そうなんだ!」と逆に褒められた。 ※具体例 ・クロピドグレルとチカグレロル →表下の会話例を参照下さい。 ・PPI(ランソプラゾール)とP-Cab(ボノプラザン) 共に胃壁細胞のプロトンポンプに作用を起こす薬剤だけどPPIはプロトンポンプに共有結合をする。そうでないP-Cabとは効き方に違いがある |
分子間相互作用 | 1.病院実習で配合変化について教えてもらった時 その理由をスムーズに理解する事が出来た。 2.鉄材の注射剤を扱った時、生食で混ぜちゃいけない理由がコロイドであると聞いて凄く腑に落ちた。 |
光・電磁波 | 1.病院実習ではカルテに書かれている検査の仕組みや目的をスムーズに理解できた 2.検査課の見学をした際、検査技師さんが実際に機械を見せてくれた。どこの部品がどんな反応を起こしているかなどすぐに理解できた。 |
熱力学 | 1.陰圧操作の手技はまさにボイルの法則 2.乳剤性注射剤やクリーム剤の配合について考えるときエントロピーの考え方が応用できる |
反応速度論 | 1.飲み合わせの悪い薬を飲む際、どれくらい時間を空ける?については吸収速度などの情報を集めると答えが見えてくる。 |
などなど一部抜粋してみましたが一見すると実務に関係なさそうな分野でも実際実習中考えてみると最終的に大学の物理の内容に繋がって行く事が非常に多いです。今後それぞれの項目について細かく説明した記事作成しようかと考えているので、興味ある方は是非お読み頂ければ幸いです!
指導薬剤師と会話した例を再現してみました

○○君(さん)
今調剤したプラビックス(クロピドグレル)の手術前休薬期間ってどれくらいだっけ~
添付文書を調べてみて・・・

14日と長いです!
理由としてはクロピドグレルは血小板薬のADP受容体に対して共有結合を形成するので不可逆的に血小板を阻害するからです。薬に暴露した血小板は活性が戻りません。よって新しい血小板が作られてくるまで時間を要します。

正解です!今後手術前の患者さんを見ることがあったら注意してください!
因みに同じADP受容体拮抗薬のブリリンタ(チカグレロル)は休薬期間が5日と短いですが理由とか分かります?

チカグレロルは可逆的にADP受容体に拮抗すると記載されていますね!
調べてみたところ詳しい結合様式までは明らかになっていませんが、共有結合で不可逆的に血小板を阻害するクロピドグレルに比べたら凝固活性の復帰が早いのも納得できました。
こんな認識で大丈夫でしょうか?

ありがとうございます。よく考えていますね!
詳しく分かっていない事も多いですが、考え方としては間違ってないです。
引き続き実習頑張っていきましょう
お遊びネタにするのもアリかも???
学んだ内容をネタとして取り扱うのもアリかと思います。勉強勉強実習実習となっても少し息が詰まってしまいますものね・・・
例えば散らかっている部屋を見てエントロピーを考える。スーパーなどで行列を見たら律速酵素を考える。などは理系ネタとしては有名なものですよね。カップルを見たらSn2反応を起こすと修羅場になるからSn1反応で行こうねなど。有機化学系のネタでしょうか?
このようにネタを考えるのはある意味基ネタとなる理論を正しく理解し柔軟に活用することが求められます。実習で調剤作業中に基礎理論を考えるのと同じ頭の使い方をしていると言えるわけです。
ですので「薬学面白ネタを考えること」は理論の理解にも繋がり、それを実務で活用する訓練にもなる。まさに一石二鳥な方法であると言えるでしょう!
今後の計画!
企画のカバー範囲
薬と病態を繋げて理解するための基礎理論物理・化学・生物。これらの項目別解説を中心にしつつ、実習でそれがどの様に役に立つか?などをサイト上で発信していきます。
サイトを見て頂いた方に「〇〇の勉強は△△の実践で役に立つ」という情報を直感的に理解して貰えるような内容にできればなと考えています。


「直感的に繋がりを理解してもらう」
為の手段として
薬学部面白ネタ 実務実習での経験談 国試出題問題から逆算した関連分野の整理
などを発信して行こうかと考えています。
やる事(5つ)
- 物理・化学・生物 これって何に役に立つの?
→日常生活ネタと実習での体験談を交えながら解説! - くすりの名前や作用覚えられん!
→名前の由来や開発経緯から見てみましょう。奥深いストーリーを持った薬もあります! - 実務実習ってぶっちゃけ???
→心意気や事前に勉強して置きたいことなど。自身の体験談を基に - 国家試験-実習
→みんなの経験や自作問題集めよう!毎日3項目紹介! - 就活、キャリア
→自身の雑記です。参考になればぜひ
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